婦人科診療-生理に関する悩み

月経困難症

生理痛を訴える方は非常に多く、特に思春期では深刻な問題です。 避妊目的の低用量ピル(卵胞ホルモン+黄体ホルモン配合錠)は排卵を抑えたり子宮内膜の増殖を抑えることで、生理痛を軽くしたり、生理の回数自体を少なくして月経困難症の治療に使われます。

■ 生理の期間に

・おなかが痛くて学校や会社を休む

・痛みのために寝込む

・生理のたびに鎮痛薬を飲んでいる

・吐き気・頭痛・めまいがある

・イライラや憂うつ感がある

これらの症状が出て日常生活に支障がある。

このような症状はありませんか?

■ 月経困難症の治療

・鎮痛薬(ロキソプロフェンなど)

まず、生理痛には鎮痛薬を処方します。

・LEP(低用量卵胞ホルモン+黄体ホルモン配合錠)

鎮痛薬で効果が不十分なら、低用量ピル(LEP製剤)の処方を検討します。

・漢方製剤

漢方薬が有効なこともあり、LEP製剤より遥かにリスクは少ないですが効果は不確実です。

・IUS(黄体ホルモン付加子宮内避妊具:「ミレーナ」)

子宮内膜に対して持続的に黄体ホルモンを放出します。多くの場合は過多月経の治療に用いられるますが、

月経困難症に対しても有効です。5年間留置できますが、出産経験のある方でないと使用は困難です。

■ 当院でのLEP製剤の処方

ヤーズ配合錠もしくは後発同効薬のドロエチ配合錠、ヤーズフレックス配合錠、フリウェルLD配合錠、

フリウェルULD配合錠5製剤のいずれかを処方していますが、それぞれ多少違いがありますので処方前にご説明します。

保険診療ですので、ご本人負担額は健康保険により異なりますが、3割負担の方で概ねピル(OC)と同様の金額になります。初めて服用される方は1ヶ月分を処方し、以降は最高3か月分までの処方になります。また、3か月分処方した翌月に再度処方することは出来ません。

月経前症候群(Premenstrual Syndrome、PMS)

排卵後から生理が始まるまで、全身がむくむ感じがして不快な気分が続く方は決して少なくありません。特に午前中に症状が重くて、昼食後は多少ましになります。特にうつ状態など気分障害が強い場合を月経前不快気分障害(PMDD)とも言います。

病気ではないのですが、会社や学校などで対人関係に支障を来す場合もしばしばあります。

治療

■ LEP製剤

LEP製剤の内、黄体ホルモンが「ドロスピレノン」の製剤(日本で発売されているの は「ヤーズ配合錠」と「ドロエチ配合錠」)は、このPMSやPMDDの治療に有効です。

■ 漢方薬

かなり有効な例もありますが、やはり不確実です。

過多月経

月経量が多すぎて、ふだんの生活に支障をきたすような場合の原因としては、子宮筋腫や子宮腺筋症あるいは子宮内膜のポリープが考えられます。

最も多いのは子宮筋腫で、殆どの場合で貧血を発症していますので治療が必要です。

治療(薬物療法)

■ 黄体ホルモン付加子宮内避妊具(「ミレーナ」IUS)

適応:出産経験のある方でしばらく妊娠を希望されない方。

健康保険が適応され、3割負担の方でしたら挿入時のコストは概ね15,000円です。

5年間の留置が可能です。これで月経血の量は減少し、20%弱の方では現象としての月経が全くなくなります。

卵巣機能には影響しませんので、月経に伴う体調の変化は持続します。

挿入後の半年間は少量の不正出血が続くことが多いようです。月経量が減るといっても、

挿入直後からというわけではありませんので、過多月経の著しい方では次回の月経時に自然脱出してしまうことがあります。この場合は再度の挿入留置を試みます。ミレーナ(IUS)には避妊効果と生理痛を減少させる効果もあります。

■ 低用量ピル

適応:出産経験のない方、もしくはミレーナ(IUS)の挿入がうまく行かない方。

これも避妊効果があるので、服用中は妊娠されませんが、一部の超低用量ピルでは避妊効果が不確実な場合もあります。

■ 黄体ホルモン製剤

■ GnRHアナログ、GnRHアンタゴニスト

脳下垂体から分泌されて卵巣に作用する「性腺刺激ホルモン」の分泌を一時的に止めて、卵巣機能をストップさせ閉経と同じ状態にする、

いわゆる「偽閉経療法」で対応することもあります。

これは一般的には子宮や卵巣の手術をしやすくするために行う短期間の手段です。

治療(外科的療法)

■ 子宮鏡下ポリープ切除術

適応:子宮内膜ポリープが疑われる場合

子宮鏡(子宮内を直接観察する器械)を用いて確認し、ポリープを切除する方法。

これが可能な施設は限定され、当院では対応できませんので対応可能な施設にご紹介します。

■ 子宮内膜掻把術

適応:子宮内膜増殖症(内膜の肥厚)。

機械的に子宮内膜の掻爬をおこないます。

■ 子宮全摘術

当院では対応できません。適応と考えられる方は対応可能な施設にご紹介します。

月経周期の変更(サイクルコントロール)

旅行、入学試験、スポーツ、ビジネスなど様々なイベントでどうしても月経を移動させたい時には女性ホルモン剤を服用することで月経を移動させることができます。

月経を早める方法と遅らせる方法がありますが、健康保険は適応できません。ずらしたい期間や月経予定日までの日数などを考えて方法を相談させていただきます。

当院での月経周期の変更

■ 月経を早める方法

月経開始後5日目頃よりノアルテン錠(黄体ホルモン+少量の卵胞ホルモン)もしくはプラノバール錠

(卵胞ホルモン+黄体ホルモン配合錠)を7~14日服用し、服用終了後2~3日で月経が始まります。

周期の変更は不確実で薬剤の服用も長期間になります。

■ 月経を遅らせる方法

月経予定日の5日前から薬剤を遅らせたい最終日まで飲み続ける方法で、ほぼ確実に移動させることができます。通常はノアルテン錠を処方します。

 

プラノバール錠の方が強力で、周期の変更には確実ですが、若年層では嘔気・嘔吐が高頻度です。